エチオピアの首都アディスアベバで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会は30日(日本時間1日未明)、日本が無形文化遺産に提案していた「山・鉾・屋台行事」の登録を決定した。日本の登録は2014年の「和紙」以来2年ぶりで、国内の無形文化遺産は計21件となる。
山・鉾・屋台行事は「八戸三社大祭の山車行事」(青森)や「博多祇園山笠行事」(福岡)など地域の安泰や厄よけを願う全国18府県の祭礼行事計33件で構成。迎えた神をにぎやかし、慰撫するため、木工や漆塗り、染め物といった伝統工芸で華やかに飾り付けた山車などの造形物が街を巡るのが特徴だ。いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されている。
11年に審査された「秩父祭の屋台行事と神楽」(埼玉)と「高山祭の屋台行事」(岐阜)が、登録済みだった「京都祇園祭の山鉾行事」(京都)、「日立風流物」(茨城)との類似性を指摘されて登録が見送られたため、政府はこの4件と、共通の特徴を持つ他の祭り29件を包括し1件として提案していた。
このため、京都祇園祭と日立風流物の2件を含め22件あった国内の無形文化遺産は1件減る。
政府間委員会は決議文で、33件の祭りが「伝承者や実践者である地域住民にアイデンティティーや芸術的創造性を与える」と評価。芸術的多様性と創造性の例であるとし、無形文化遺産の基準を満たすと結論付けた。
事前審査をしたユネスコの評価機関は10月、政府間委員会に登録するよう勧告していた。
無形文化遺産にはこれまでに能楽、歌舞伎、和食などが登録されている。18年には「男鹿のナマハゲ」(秋田)など、神の使いに仮装して家々を訪ねる8県の行事8件を一括して提案した「来訪神 仮面・仮装の神々」が審査される予定。
Contents
- ユネスコ無形文化遺産に登録された「山・鉾・屋台行事」
- 1.八戸三社大祭の山車行事(青森県 八戸市)
- 2.角館祭りのやま行事 (秋田県 仙北市)
- 3.土崎神明社祭の曳山行事 (秋田県 秋田市)
- 4.花輪祭の屋台行事 (秋田県 鹿角市)
- 5.新庄まつりの山車行事 (山形県 新庄市)
- 6.日立風流物 (茨城県 日立市)
- 7.烏山の山あげ行事 (栃木県 那須烏山市)
- 8.鹿沼今宮神社祭の屋台行事 (栃木県 鹿沼市)
- 9.秩父祭の屋台行事と神楽 (埼玉県 秩父市)
- 10.川越氷川祭の山車行事 (埼玉県 川越市)
- 11.佐原の山車行事 (千葉県 香取市)
- 12.高岡御車山祭の御車山行事 (富山県 高岡市)
- 13.魚津のタテモン行事 (富山県 魚津市)
- 14.城端神明宮祭の曳山行事 (富山県 南砺市)
- 15.青柏祭の曳山行事 (石川県 七尾市)
- 16.高山祭の屋台行事 (岐阜県 高山市)
- 17.古川祭の起し太鼓・屋台行事 (岐阜県 飛騨市)
- 18.大垣祭のやま行事 (岐阜県 大垣市)
- 19.尾張津島天王祭の車楽舟行事 (愛知県 津島市・愛西市)
- 20.知立の山車文楽とからくり (愛知県 知立市)
- 21.犬山祭の車山行事 (愛知県 犬山市)
- 22.亀崎潮干祭の山車行事 (愛知県 半田市)
- 23.須成祭の車楽船行事と神葭流し (愛知県 蟹江町)
- 24.鳥出神社の鯨船行事 (三重県 四日市市)
- 25.上野天神祭のダンジリ行事 (三重県 伊賀市)
- 26.桑名石取祭の祭車行事 (三重県 桑名市)
- 27.長浜曳山祭の曳山行事 (滋賀県 長浜市)
- 28.京都祇園祭の山鉾行事 (京都府 京都市)
- 29.博多祇園山笠行事 (福岡県 福岡市)
- 30.戸畑祇園大山笠行事 (福岡県 北九州市)
- 31.唐津くんちの曳山行事 (佐賀県 唐津市)
- 32.八代妙見祭の神幸行事 (熊本県 八代市)
- 33.日田祇園の曳山行事 (大分県 日田市)
ユネスコ無形文化遺産に登録された「山・鉾・屋台行事」
1.八戸三社大祭の山車行事(青森県 八戸市)
八戸三社大祭(はちのへさんしゃたいさい)は、毎年7月31日から8月4日に青森県八戸市で行われる神事を根拠とした祭である。
東北地方最大級の神事であり、7月31日が前夜祭、1日が「御通り(神幸祭)」、2日が「中日」、3日が「御還り(還幸祭)」、4日が後夜祭という日程になっている。
「三社」とは、八戸市内の法霊山龗(おがみ)神社(法霊神社)・長者山新羅神社・神明宮のことで、三社の神輿行列と市内各町を中心とした組の20数台の華麗な人形山車が神社の氏子として八戸市中心市街地を巡行する。 期間中は105万から110万人の観光客が訪れる。
2.角館祭りのやま行事 (秋田県 仙北市)
角館のお祭り(かくのだてのおまつり)は、秋田県仙北市の角館地域の鎮守である神明社と成就院薬師堂の祭で、毎年9月7日~9月9日に行われる。「角館祭りのやま行事」として重要無形民俗文化財に指定されている。囃子の名称である飾山囃子(おやまばやし)を祭り全体の名称として使う事もある。
旧角館町は、佐竹北家の城下町として発展をみた町で、武家の居住する内町と町人の住む外町に別れていた。祭りは外町を中心に行われ、『佐竹北家日記』元禄7年(1694年)に鹿島祭りとして初見されるが、神仏分離令などの影響を受け、明治初期以降紆余曲折を経て、現在では7日に神明社の宵祭り、8日に神明社の本祭りと薬師堂の宵祭り、9日に薬師堂の本祭りが行われている。